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ダイシンビルドWEBスタッフの後藤です。
突然ですが皆さんは2024年問題をご存じでしょうか?
最近特に目にすることが増えた「2024年問題」ですが、今回は2024年問題とはどういったものなのか、建築業界に及ぼす影響と共にお伝えいたします。
「2024年問題」なんとなく聞いたことがあるなと言う方もいらっしゃれば、大問題だととらえられている方もいらっしゃるかもしれませんが、Googleで検索すると、下記と表示されます。
「働き方改革法案によりドライバーの労働時間に上限が課されることで生じる問題の総称のこと。 具体的には、ドライバーの時間外労働時間が年間960時間に制限されることで、一人当たりの走行距離が短くなり、長距離でモノが運べなくなると懸念されている。」
上記の解説にある通り、労働環境改善のためにつくられた法によって、今まで通りの物流が維持できなくなるというのが「2024年問題」です。
なんとなく、どこまで影響があるのか分かりにくい気がしないでもありませんが、そんな中、7月20日の日本経済新聞の朝刊一面に「日用品、最大の物流連合ーライオンなど10社、24年問題備え」という記事が載りました。
ライオンなど10社とありますが、この物流連合にはエステー、ユニリーバ・ジャパン、小林製薬などの9社+卸の会社が加わっています。
どの会社の製品も、日常を支えてくれている大切な会社であり、日々の生活に欠かせない企業様です。
その上で、この最大の物流連合は、P&Gジャパンにも参加を促すことを検討しているそうです。(※7月20日の記事時点)
2024年問題とは、日本で暮らす誰もが知る企業名が名を連ね対策を取らなくてはいけないほど、大きな社会問題なのだということがこの点からも分かってくると同時に、これからの生活がどうなっていくのか不安になっていく中、2023年10月9日。阪急バスから突然、一部路線廃止の発表がありました。
先で御紹介した日本経済新聞の記事から3か月も経たない間に、金剛バスの全線廃止、阪急バスの一部路線廃止が相次いで発表されました。
金剛バスの全線廃止の理由はドライバー確保が難しかったためだと発表され、阪急バスの方はドライバーの就労環境を良くするためだと発表されました。
どちらもドライバーに関する問題であり、2024年問題と別物だとは思えない状況です。
金剛バスについてはローカルニュースにもかかわらず、金剛バスが走るエリアが大阪近郊であり、一日2600を超える人が利用する路線バスだったかことから、ことさら全国で大きく報じられました。
金剛バスよりも状況が悪い路線バスは日本全国、無数にあることは容易に想像できます。
大阪近郊でダメなら、地方のバス会社は一体どうなるのかという心配が、全国で報じられた理由だと言われています。
阪急バスに関しては、私自身廃止される路線とは別の路線ですが、日頃使用させていただいており、遥か昔の学生時代と比べると本数が半分になったなーなんて思っていたのですが・・・。
こういった理由から、半分に減らさざる負えない状況があり、走らせてくれているだけでも本当にありがたいことだと実感しました。
そんな路線バスのニュースが流れる中、10月6日には「沖縄の修学旅行、バスの運転手不足で12月まで1,000台以上がまだ手配できず」なんてニュースも流れてきました。
このニュースは非常にセンセーショナルなタイトルですが、中身はもっと衝撃的で10月になった今「今年10月から12月にかけては、運転手不足によって、1,168台の手配ができていない状況だという。」と載っています。
「今」の話じゃないか・・・と心配になると同時に、同じ内容の記事が少し前にも出ており、その時と状況がさほど変わっていないと知ってさらに驚きました。
この件は、日本中の子供たちの修学旅行に関する物なので目にする機会がある場所へ上がってきましたが、ドライバー不足による問題はすでに多々噴出しているのだということがよく分かるニュースだと言えるのではないでしょうか。
そのそも2024年問題はなぜ起こるのか、なぜ突然多数報道されるほどの状況になっているのか。
それは、残業規制自体はただのトリガーであり、実際は複数の要因が重なっているためです。
物流業界は以前より慢性的な人手不足にもかかわらず、効率化投資も遅れている業界でした。
このいくつもの問題を、物流業界で働いてくださる方々。ドライバーを始めとする方々の長時間労働で補い何とか現場を回していたという現実があります。
この現実に残業規制がストップをかけることで、輸送力不足「2024年問題」が起こるのです。
ここからさらに恐ろしいのが、規制に対応したことで起こるさらなる人材不足が発生する可能性です。
現在、長時間労働を行ってくださっている方々が規制に対応するためには、長時間労働を減らす。イコール、仕事を減らすということになります。
又は、短時間でも多く輸送できるように効率化する以外に方法はありません。
しかし、仕事が減ればもちろん収入も減ってしまうため、人材が他産業へ流出するのは避けられないでしょうし、あまり稼げない仕事に新たに就こうと考える人が多数いるとは考えにくく、さらなる輸送力低下が避けられないという悪循環も起こりえるのです。
これが現実になれば、すべての企業の生産活動などに影響するのはもちろん、ひいては、いくらでも買い物ができるスーパーやショッピングモール、すぐに届けてもらえる宅配サービスや通販の縮小も起こりえます。
実際、ヤマト運輸は一部区間を翌日配達から翌々日配達に切り替え、郵便局も普通郵便は翌日配達と土日祝日の配達を取りやめました。
最悪の事態を阻止しようと悪戦苦闘してくださっている、物流事業者や荷主の方々。
一消費者として何ができるのか、しっかり考えなくてはいけない時代になっていることを実感しますね。
2024年問題は物流の問題として報道されていますが、建築業界にも同様の問題が起きています。
建築業界も物流業界と同じく、人手不足、職人の高齢化といったいくつもの問題を抱えたまま、職人の長時間労働で何とかやり過ごしてきた業界です。
下記の表は、国土交通省が2021年に発表した「建設業の働き方改革の現状と課題」に掲載されている物です。
興味のある方は、下記からぜひご覧ください。
https://www.kensetsu-kikin.or.jp/news/57a42379796b2a6c1d23286d40ea5b611f163364.pdf
上記表にある通り、建設業就業者数は2020年時点で55歳以上が36.0%、29歳以下は11.8%と高齢化の進行が他業界と比較してもより深刻であることがわかります。
今後は団塊の世代の大量離職も想定されており、人材の確保と技術継承が喫緊の課題として挙げられています。
今年の8月。
「大阪万博、残業上限の『例外』要請」「万博工事に『残業規制を適用しないで』」というニュースが流れたのは記憶にある方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
建設業は、製造業やほかの全産業と比較しても年間労働時間が長いという問題を抱えており、2024年問題のトリガーであった「時間外労働の上限規制」の影響を大きく受けます。
実際、「時間外労働の上限規制」は、今始まったものではなく、実は2019年4月(中小企業は2020年4月)から適用されています。
ただ、影響が非常に大きい業界に関しては、5年の猶予期間が設けられていたため、今「2024年問題」となって噴出しているのです。
「時間外労働の上限規制」は決して物流業界だけを対象とした規制ではなく、4つの業界に猶予期間が設けられました。
影響が非常に大きい業界のうちの一つが、「工作物の建設の事業」だったのです。
下記の表も、国土交通省が2021年に発表した「建設業の働き方改革の現状と課題」からお借りしてきたのですが、年間の労働時間が製造業と比べて147時間、全産業と比べると364時間長く、年間出勤日数は製造業に対して20日、全作業と比較すると30日多いことが示されています。
30日・・・休みなしの丸1か月分多いと考えると、よりぞっとする数字ですね。
その後、実際にどうなったのか結論のニュースを見れておらず分からないのですが、建築業界の問題は猶予期間の5年間でも改善することはできず、万博という国と府の一大事業でも、適用解除し職人の長時間労働という、職人のプライドにすがり無理をしていただくことでやり過ごしたいと考えていたことは事実です。
ちなみに余談ですが、猶予期間が設けられた業界は、「工作物の建設の事業」・「自動車運転の業務」の他、「医業に従事する医師」も対象です。
猶予期間が生かせず、「工作物の建設の事業」・「自動車運転の業務」で問題として表面化している現状、「医業に従事する医師」の2024年問題も非常に気になる点です。
突然ですが、私の息子が就職活動を始める際、どの業界に行きたいのかとても悩んでいました。
今の学生たちの就職活動は、どう生きたいのかから考えるらしく、私たちの時代との違いを強く感じるエピソードがいくつもありました。
そんな中、息子が選んだのは自動車業界でした。
「しまなみ海道走破」を目標に友達の運転で深夜広島に向かっていた時、道路はこの国の血管だと実感したそうです。
多くのトラックが深夜の高速を次々と走り抜けていく中を、遊びに行く自分たちの車が走っている。
自分たちの暮らしがあるのは、こうやって血管に血を流し、日本の隅々まで必要な物を届けてくださっている方がいるからだと分かったから、道路や交通に関する仕事に就きたいと考えたそうです。
『えらいハードルの高い業界を・・・』と思いましたが、親が何か言えるわけもなく、見守るのみの日々です。
20年以上生きてきた息子が初めて理解した、暮らしの中にはそれを支えてくれている人が必ずいるということ。
私自身、通販サービスの便利さ、スーパーに行けば何でも買える楽さ等々、分かっているようで当たり前のこととして幸せを受領していた気がします。
このコラムを書いている今日、政府が6日に発表したポイント還元事業について報道されていました。内容は、配達ドライバーへの負担が大きい再配達率の半減を目指し、荷物を受け取る人が「置き配」や宅配ボックスの利用、コンビニでの受け取りのどれかを選んだ場合、利用者にポイントが付与されるということです。
なんで、利用者?なんで事業者支援?そこは働いてくれているドライバーに還元じゃないの?と不思議になっていたところ、報道の方向性も同様でした。
今、Z世代の真っ最中である息子やその友達を見ていると、「自分はこれからどう生きたいのか」で職の選び方があまりに違いました。
お金は少なくてもいいから、自分の時間が欲しい子。
出社の有無が重要な子。休みの取りやすさが重要な子。
奨学金を早々に返済してしまいたいから、大変なことは分かっていても給料のいい会社を目指す子。
考え方は様々であり、求める労働時間も、労働環境も大きく違いました。
ただ一点共通しているのは、労働に見合った対価が欲しいと考えているという点です。
多様性の世の中だからこそ、一様に働く時間を決めてしまうのではなく、業界を限らず、働いた分にはしっかり対価があり、どんな働き方も強制されることなく選べる社会になるべきではないでしょうか。
2024年問題の中心である建築業界で職人の頼もしい背中を見つめる日々ですが、「そんな世の中になって欲しい」「この方々の技術をしっかり次へと受け継いでほしい」と思わせられる2024年問題です。