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家づくりコラム質を求めると自然素材にたどり着く?

こんにちは、ダイシンビルドWEBスタッフの後藤です。
先日ニュースで、最近は昼食にお弁当を持参する人が増えていると目にしました。
中にはお弁当持参率が8割を超える企業や団体もあるとのことで、すごいなーと純粋に思っていたのですが、よく考えなくても弊社もそのうちの1つでした。
年若いスタッフから、ベテランスタッフまで。
それぞれ自分の好みと量に合わせて作ったお弁当を持参し、思い思いの昼休みを過ごしています。
とても良い光景だなーと思うと同時に、1人は朝4時半起きで家族と自分の分のお弁当を作っていると聞いて、ぞっとしたりもしました。

と、なぜこんなことを言い出したかというと、最近特に人気のお弁当箱が「わっぱ弁当」だと耳にしたからです。
確かに、どこに行っても一番いい場所に売っているし、某300円均一でも1000円や1500円で売っているのを目にします。
お弁当を作る文化が全くない我が家では、気にも止めることなくスルーする対象だったため、正直驚きを隠せません。
なので今回のコラムでは、「わっぱ弁当」が素晴らしいお弁当箱として脚光を浴びている点に注目しつつ、自然素材と人工素材の違いと、暮らしと質についてお伝えいたします。

なぜ今わっぱ弁当?

わっぱ弁当の歴史は非常に古く、起源は奈良時代までさかのぼります。
木こりが杉の枡目を使って作ったと言われており、平安時代の遺跡(平城宮跡)からほぼ原形をとどめたままの「曲げわっぱ」とされている物が発掘されているから驚きますし、今と形が変わらないことにも更なる驚きがあります。

平城宮跡で出土した曲物

最近よく目にする「わっぱ弁当」ですが、10年ほど前はほとんど目にすることは無かったのではないでしょうか?
私は息子が高校生だった頃に、お弁当箱を探しにLOFTへ行った際、素敵だと手に取りつつも、取り扱いの複雑さと、他のお弁当箱と比べて一桁違う価格に、「あ・・・」となりながら戻した記憶があります。
それがなぜ最近、こんなにも目にすることが増え、ユーザーが増えたのか。
その理由は、「ご飯が冷めてもふっくらしていて美味しいから」ということだそうです。

人工素材であるプラスチック製のお弁当箱に詰めたご飯は、時間が経つとベタベタしてしまいますが、曲げわっぱに入れたご飯は時間が経っても炊き立てのようにお米の粒が立っているのが特徴です。
何故ふっくら美味しいご飯が保てるのか、それは曲げわっぱの材料である自然素材「木」にあります。

曲げわっぱの材である「木」にはもともと水分が含まれており、伐採・製材後に、水分は乾燥していきます。
この時、木に含まれる水分はゼロになることは無く、乾燥させた後でも絶えず水分を吸収・放出しているのです。
この特徴は、木をそのまま加工した場合も生きているため、曲げわっぱに詰めたご飯は、余分な水分は木が吸収・放出してくれるので、美味しさが保てるというわけです。

一度曲げわっぱに詰めたお弁当を味わうと、もう普通のお弁当箱には戻れないと耳にするのは、こういうことが理由なのですね。

自然素材って何?

自然素材とは、化学物質を含まない天然素材のことを指します。
家造りの現場で無垢の床材や、漆喰、外壁に使用されている焼杉なんかも、自然素材を加工した建材になります。

自然素材は、素材そのものに優れた力があります。
例えば、無垢材には蓄熱性や調湿性があり、水分を吸収したり放出したりして、室内の湿度や温度を一定に保つ力があります。
無垢のフローリングなら、冬場もあまり冷たいと感じないと言われる理由は、木の持つ蓄熱性にあり、夏でもサラッとしていると言われる理由は、調湿作用のおかげです。
他にも、サンゴ礁の石灰からできている漆喰は、建築基準法で不燃材料と認められるほど耐火性に優れています。
姫路城を始めとした、お城の外壁や内壁に漆喰が使用されているのは、万が一火災が起こった場合でも、燃え広がりを抑えるためなのです。

自然素材にはそれぞれに優れた点があり、取り入れれば取り入れるほど、心地の良い空間が出来上がるのはよく知られていることです。
なのになぜ、自然素材ではない、人工素材が使用されることが多いのか、それは、自然素材にもデメリットがあるからです。

自然素材のデメリット

自然素材にもいくつかのデメリットがあるのでご紹介いたします。

1:安定供給が難しい

自然素材は、名前の通り「自然」に由来しているため安定供給が難しいという点があります。
分かりやすくお伝えすると、秋を代表する魚であるはずのサンマが、漁獲不良のため手が届きにくい魚となってしまったり、最近キャベツが1,000円近くなったのと同じ現象です。
自然環境に左右される自然素材は、工場で安定供給されている人工素材のように、欲しいと思った材がいつでも手に入るわけではないですし、野菜や果物と同じく「産地」があるのです。

※人工素材は自然素材と比較すると安定供給されていと言えますが、人工素材の供給には社会情勢が大きく影響します。
記憶に新しいところでは、コロナ禍に起こった各社の設備供給不足があります。
最近も震災やオリンピック、戦争の影響が大きく出ている人工素材が多々あるため、人工素材だからと言って必ずしもお施主さんの希望に添えるとは限りません。

2:コストがかかる

自然素材は作り上げるのに人の手と時間を必要とします。
要する人の手と時間は、工場で大量生産できる人工素材とは比較にならないほど膨大であり、無垢材であれば材として利用できるようになるまで、早くても数十年は必要です。
その上、人の手で加工する必要がある以上、時代がいくら進んでも大量生産が難しい現状に変わりはありません。
結果、当然ですが材そのものが高くなってしまいます。

3:手間がかかる

ここでもう一度曲げわっぱに戻りますが、曲げわっぱは、食器洗浄機も乾燥機も、電子レンジも使用できません。
食べた後もさっさと洗う必要があります。(漆で塗装されたものは、数時間なら問題ないそうです。)
プラスチックや金属のお弁当箱と比較すると、使用時に要する手間は歴然ですよね。

同じように、自然素材は使い方や経年変化で色や形が変わっていきます。
無垢材においては、水分を吸収したり放出したりする調湿作用の中で、ひび割れや反り、隙間といった症状が発生する可能性もあります。
ジュースをこぼしてしまっても、ビニールコーティングされたフローリングなら吸収しませんが、無垢材は吸います。
その為、自然素材を建材として使用する場合は、それぞれの素材に合わせて吟味する必要があるのです。

4:施工に技術がいる

自然素材は「同じものが無い」という特徴があります。

杉を使った無垢フローリング材一つをとってみても、木目の並びや色味は二つとして同じものはありません。
その為、職人はフローリングを施工する前に一度すべての材を並べ、木目や色味を確認しながら綺麗な配置を探しているのです。
張りあがった床を見ていると、そんな作業を職人が行っているなんてなかなか想像することは無いと思います。
実際この目で見ても「何をしているんだろう?」と思ってしまう程、一見必要性が分からない作業です。
しかし、適当に材を並べた床と、職人が丁寧に材を並べた床には、見た目や空間の広がり、足触りに歴然とした差が現れます。

フローリングの作業は見た目や感触だけの話ですが、自然素材には、現場で適したサイズに正確に加工してから施工するという技術が絶えず求められます。
家造りの現場において「正確に加工してから施工する技術」は当然どこでも求められる技術のような気がしますが、規格のある人工素材を使用する場合はほとんど必要ありません。
自然素材は「全く同じものが無い」ため、「同じようなものにする」技術が職人に求められるのです。

人工素材はどんな素材を指すの?

人工素材とは、名前の通り人の手によってつくられた素材を指します。
家づくりで絶対に欠かせないコンクリートも、人工素材ですし、プラスチックや合板なども、全て人工素材です。
木を使っていますが、合板フローリングも人工素材です。

人工素材は、長期間変形しないという特徴の他、同一の物が作れるという点から、施工しやすく、職人の腕をあまり選ぶことも無く均一な仕上がりが見込めます。
無垢フローリングを使用すると、季節によって隙間が出来ることもありますが、合板フローリングなら1年を通して隙間ができないのも、人工素材ならではの特徴を持っているからです。

入手しやすく、自然素材と比較すると安定供給に優れている人工素材は、家づくりの現場だけでなく、暮らしの中で絶対に欠かせない素材です。
ただ、種類の多さゆえ、同じ役割を担う商品であったとしても、使用されている材料や作り方は商品ごとに違います。

例えば、フローリング材の場合、木のくずをボンドで集成し、表面に木目のシートを貼ったものもあれば、フローリングの基となる木自体が人工木でできており、そもそも木ではないもの。
逆に、ほぼ自然素材じゃないの?というものもあり多種多様です。
ただ一点だけ共通点があります。
それは、人工素材を用いた製品には、必ず化学物質が含まれているということです。
含有量は製品によって全く違いますが、中には健康被害をもたらす物質が多く含まれている素材がいまだに建材として売られ、使用されているのも事実です。

ですが、先にもお伝えした通り、人工素材は家づくりの現場において、必要不可欠な存在です。
コンクリートもグラスウールの断熱材も大きくくくると人工素材だからこそ、人工素材すべてを嫌がるのではなく、自然素材を取り入れると共に人工素材はできるだけ体に優しく費用対効果の高いものを選ぶことで、質の高いお家が出来上がると弊社では考えています。

まとめ

何故家づくりでお弁当?曲げわっぱの下り長くない?と思われたかもしれませんが、曲げわっぱのお弁当を目にしたとき、私の頭には人が暮らす家が浮かんできました。
あんなに小さなお弁当箱でさえ、木とプラスチックでは大きな違いがあるなら、人が暮らす家の場合、どれほどの違いがあるのだろう・・・と。

人工素材にもいい点はいくつもあり、メリットも豊富にあります。
でも、お弁当のご飯のように、同じものを比較した場合、自然素材の方が優れていると言い切れるものが多々あります。
なのになぜ、人工素材が家づくりの現場で多く採用されているのか。
それは、自然素材のデメリットである価格と手間にあります。

300円均一で300円で売っているプラスチックのお弁当箱と、300円均一なのに1,500円で売っている木のお弁当箱のように。
質を求めると値段が上がってしまうのは避けられない事実です。
自然素材は人工素材や工業製品のように、工場で大量生産することが出来ないためどうしても手間と時間がかかります。
その為、価格で比較されると負けてしまうのです。
最近までの、曲げわっぱ弁当もその一つだったと言えるのではないでしょうか。

同じように近年、家づくりの現場でも「質を重視し、大切に使い続ける」という視点がとても増えてきたように感じます。
家の性能、素材にこだわり続けてきた弊社としては、とても嬉しいことです。

性能や素材は、その箱の中で暮らす生き物に必ず影響します。
家造りの現場において、全ての場所で質を求めることは、費用の面から見て非常に難しいと思います。
プラスチックのお弁当箱をわっぱ弁当箱に変えると価格が5倍になるように、家の価格が5倍になるのは無理極まり無いことですからね。
でも、例えば断熱性能はしっかりとる。
バリアフリーが必要な時に向け備えておく。
忙しくても、時間が使いやすくなる自分に合ったプランを考える。
体に優しい素材を使用する。
等々、ポイントポイントで費用対効果を考えながら、質を取り入れることは可能です。

質という漠然とした言葉を使っていますが、曲げわっぱ弁当に表れているように、「質」を取り入れるということは自分と自分の大切な存在を、時間と手間をかけて大事にするということなのではないかと思います。

せっかく家を建てるなら、「質」にもこだわりたいなと思われましたら、「どこにこだわりたいか」「質を暮らしの中のどの部分に求めたいのか」じっくり考えてみてくださいね。

完成見学会のお知らせ

7月7日(日)、七夕の日に弊社設計スタッフの森岡が担当する、京町家のリノベーション完成見学会が開催されます。
京町家もまた、京都の文化の中で発展してきた建築の1つであり、現在見直し始められている古き良き建物です。
大切な文化である京町家に、断熱や耐震といった性能という質と、空間や自然素材といった質を新たに詰めこむことで、現代に合った暮らしやすい町家に変身しました。

7月7日開催、2024京町家のリノベーション見学会会場、2024京町家の現場写真。
森岡撮影

7月の京都は厳しい暑さになることが容易に想像できるので、断熱リノベーションの性能も存分にご体感いただけます。
今ある住宅の質を高めようかな?と考えている方はもちろん、質を求めた家を建てたいと考えられている方にも参考にしていただける見学会になりますので、ぜひご来場ください。

後藤 泉


阪神淡路大震災で自宅が半壊。その後慌てて建て替えた家は、気になる箇所が多く、夏は暑く冬は寒い家でした。そんなことから住宅業界に興味を持ち、ダイシンビルドのWEBスタッフを務めさせていただくようになりました。どうぞよろしくお願いいたします。プロフィール写真は、我が家の愛猫です。