焼き杉板を外壁に採用するメリット・デメリットは?種類や費用についても解説

「焼き杉板を外壁に採用したいけれど、メリットやデメリットはある?」とお悩みの方もいらっしゃるでしょう。外壁に焼き杉板を採用したくても、メリットやデメリットを知らなければ失敗してしまうリスクが高まります

本記事では、焼き杉板を外壁として採用するとどのようなメリットやデメリットがあるかをお伝えします。

焼き杉板の種類や費用についても解説しているため、現在外壁を何にするか困っている方や焼き杉板について知りたい方はぜひ参考にしてみてください。

焼き杉板とは

焼き杉板とは、杉板を焼いて表面を炭化させた板を指します。

杉板の表面を焼いて炭化層を作ることにより耐久性を上げて、落ち着いたデザインを作り出すことができるため、多くの人に選ばれている外壁です。焼き杉は西日本では一般的な伝統技術で、東日本に広まったのは最近といわれています。

杉板はしっかり管理しておくとまっすぐに育つため、建築材料としても扱いやすい樹木です。しかし、杉材自体は耐久性が高いというわけではありません。

とくに柔らかい辺材部分である「白太」は耐久性が劣るため、外壁に使用すると耐久性の問題が発生することもありました。

昔は現在のように機能性が高い塗料もないため、外壁に杉板を使用することは多くなかったようです。そこで、焼杉の技術が現れたことにより問題が解決され、外壁材として使用することも増えてきました。

焼き杉板の種類

焼き杉板には作り方にも違いがあり、作り方の違いにより種類も異なります。

焼き杉板の作り方には大きく分けて2種類あるため、外壁に採用する際は各特徴について理解することが重要です。以下では、各焼き杉板の作り方や種類について解説します。

三角焼き

三角焼きは、西日本で言い伝えられている焼き杉板の伝統的な焼き方です。

3枚の杉板を三角柱に組み合わせて荒縄で縛り、なかにカンナくずや新聞紙を入れて火をつけることで炭化層を作っていきます。着火直後に火種側を下にして垂直に立てることで、煙突効果で内側が勢いよく燃やすことが可能です。

内側が燃えるため炭化の進行具合を確認しにくく、消化のタイミングが重要となります。しかし、バーナー焼きよりも厚い炭化層を作ることができ、効率的に炭化層を作ることが可能です。

ただし、三角焼きは大きい火が伴うため、屋外であっても広い場所で行う必要があります。

バーナー焼き

「バーナー焼き」は焼き杉板を手軽に作ることができる製法です。バーナー焼きの場合、手軽にできるためご自身でも制作可能ですが、大きな板を焼く場合は家庭用ガスバーナーでは時間を要します。

木材加工場では、専用の大型バーナーを使用して効率的に焼き杉板を生産していることが一般的です。表面をさっと焼いて高い焦げ面を作れますが、厚みのある炭化層を形成することは難しいでしょう。

ただし、木材にアンティーク感を与えるためにバーナー焼きを取り入れているケースもあります。耐久性を高める目的ではなく、木材の見た目を変える際にはバーナー焼きが適しているでしょう。

焼き杉板を外壁に採用するメリット

焼き杉板を外壁に採用するのに、7つのメリットがあります。各メリットについて理解しておくことで、今後家の外壁に焼き杉板を使用したい場合は判断材料ともなるはずです。

耐久性が高い

焼き杉板は、耐久性が高い傾向にあります。焼き杉板は表面を焼くことにより炭化層が形成され、腐りにくくすることが可能です。炭が腐るということはないため、炭化した部分は耐久性が高いといえるでしょう。

通常の杉板を外壁材として使用すると、雨風にさらされ、蒸れて乾くことを繰り返していきます。上記を繰り返していくうちに、木目の柔らかい部分が次第に痩せていき木材も腐っていくでしょう。

しかし、焼き杉板は炭化しているため、菌に必要な栄養素がなく菌の繁殖を抑えることが可能です。また、炭化層は紫外線や害虫から保護する効果もあり、焼き杉板は長期的に美しさや機能性を保つことができるでしょう。

そのため、焼き杉板は外壁材として使用しても高い耐久性があることにより、長期的に使用する際にも最適な外壁といえます。

比較的安価で購入できる

焼き杉板は、比較的安価で購入できます。杉板はほかの木材に比べて手に入りやすく、価格もお手頃です。焼き杉板に加工することで表面の耐久性や防虫性が向上し、外壁材として優れた性能を発揮します。

また、ほかの外壁材と異なり、人件費や塗装費は不要で費用を抑えることが可能です。長期的に見てもメンテナンスの必要がないため費用を大幅に抑えられるでしょう。

メンテナンスに手間がかからない

焼き杉板はメンテナンスに手間がかかりません。焼き杉板は表面を焼いて炭化層を形成するため、耐久性が飛躍的に向上し、30年以上の耐久性があるといわれています。

歴史ある建物でも焼き杉板が使用されていることが多く、持続性があることが実証されているのです。適切に施工された焼き杉板の場合、定期的なメンテナンスはほとんど必要ありません。

炭化層が自然の防護膜として機能しており、雨風や紫外線から木材を守ります。さらに、傷や劣化が合った場合でも板の張替えが簡単に行えるため、部分的に修繕可能です。

そのため、美しい見た目を長期間維持しながら、維持管理にかかるコストを大幅に削減できます。

断熱効果が高い

焼き杉板は断熱性の高さもメリットに挙げられます。

焼き杉板は細胞内で空気の層が形成され、熱伝導率を低く抑えることが可能です。空気層は断熱材としての役割も持ち、外部からの熱を遮断しやすくなります。

結果、夏場でも焼き杉板の外壁を採用していれば表面温度が上がりにくく、触れていても熱くなりにくいでしょう。また、断熱効果が高いことにより、室内の温度を安定させる効果もあります。

夏の暑さを軽減して冷房の効率を高めることができ、冬場は暖気を逃しにくくすることにより快適な温度に保つことが可能です。そのため、エネルギー消費の削減や家のなかでの快適性の向上にも期待できます。

環境に優しい

焼き杉板は、製造過程で防腐剤や防虫剤などの化学製品を使用することはなく、自然な炭化現象により木材の耐久性を高めることが可能です。そのため、製造段階で環境負荷が少なく、地球環境に配慮している自然素材であるといえます。

さらに焼き杉板は炭化層が木材を保護し、耐候性や耐久性が向上するため、定期的な塗装や処理も不要です。そのため、塗料の使用量を削減してメンテナンスにかかるエネルギーや資源消費を軽減できます。

上記により長期的な維持管理コストも軽減でき、建築物の環境負荷が抑えられるため、焼き杉板は環境にも優しいといえるでしょう。

経年変化が楽しめる

最初は黒く焼かれた表面が家全体に落ち着いた雰囲気を与え、高いデザインでも人気です。
さらに、焼き杉板は、時間の経過とともに起こる経年変化を感じられます。

表面の炭化層が徐々に剥がれていき、木材の本来の色が現れ始めるのです。外壁が白っぽくなる変化は自然の年輪とともに家の歴史を感じられます。経年変化は建物に個性を与え、時間経過も楽しめるでしょう。

地域性のある杉を使用できる

焼き杉板は、地域性のある杉を使用できます。地域性のある杉は、土地の気候や環境に応じて成長するため、木材自体が地元の特性を反映していることが特徴です。

上記により建物が地域に調和し、土地に合う外観を実現できるでしょう。また、地域性のある杉を使用すると地域の木材産業を支援し、地域経済に貢献できるはずです。そのため、地域の持続可能な開発を促進し、地元の資源を有効活用した外壁を作り出せます。

焼き杉板を外壁に採用して後悔するデメリット

焼き杉板を外壁にするデメリットは主に4つ挙げられます。デメリットを知らずに焼き杉板を外壁に選んでしまうと、後悔してしまうかもしれません。焼き杉板を外壁に選ぶ際は、デメリットを事前に理解しておきましょう。

木目や色調にばらつきがある

焼き杉板を外壁するデメリットは、木目や色調にばらつきがあることを挙げられます。木材は異なる模様を持ち、焼き加減により仕上がりが変わることが特徴です。

そのため、焼き杉板を使用する際は、板ごとの木目や色調に自然なばらつきが生まれるでしょう。しかし、自然なばらつきを魅力に感じる方もいるため、事前に確認しておくことが大切です。

一方、外壁全体の見た目に統一感を求める場合は、ばらつきをデメリットと感じるかもしれません。外観を統一したい方は、焼き杉板を外壁に採用する前にしっかり検討しておきましょう。

使用できる地域に制限がある

焼き杉板を外壁に採用する場合は、一部の地域で使用に制限があります。焼き杉板は火災のリスクが高く、防火指定が厳しい地域では火災リスクが問題となり、使用できないかもしれません。

日本の都市部や火災の危険性が高い地域では、防火規制が厳格に適用されているため、建築材料として使用が許可されない場合があるため注意が必要です。

そのため、焼杉板を外壁材として使用する際は、事前に地域の防火規制を確認してから採用するようにしてください。

割れや変形が起こる

焼き杉板を外壁に採用すると、割れや変形が起こる可能性があります。

木材を高温で焼いて表面を硬化させる技術は、表面と内部の熱膨張率に違いが現れて気候や湿度の影響を受けるでしょう。焼き杉板は表面が硬化しているため、温度や湿度の変化を受けやすくなります。

影響を受けると表面に亀裂が入ったり、板全体が反り返ったりすることもあるため、注意が必要です。とくに、外壁として使用する場合は日光や雨風にさらされるため、割れや変形が生じやすくなります。

割れや変形を防ぐためには、適切に施工するかメンテナンスを行うようにすると良いでしょう。

触ると汚れる

焼き杉板を外壁に採用すると、表面が炭化しているため触ると汚れてしまいます。焼き杉板の表面となる炭化層は黒いすすのような状態であるため、触れると手や衣服に黒い汚れがつきやすいです。

とくに小さな子どもやペットがいるご家庭の場合、知らないうちに汚れを付けてしまうかもしれません。また、外壁として使用する場合は風や雨で炭化層が少しずつ剥がれ落ち、周囲の環境を汚してしまう可能性があります。

上記のような外壁の汚れに関する問題を解決するためには、炭化層のうえから透明な保護塗料を塗布すると良いでしょう。

塗料は炭化層を保護することにより、触れても汚れがつきにくくなります。しかし、塗装には定期的なメンテナンスが必要であるため、事前に考えたうえで利用しましょう。

焼き杉板の価格相場について

焼き杉板の価格相場は、加工方法や品質、種類により異なりますが、一般的に1平方メートルあたり5,000〜10,000円程度です。

手作業で焼かれる製法であるバーナー焼きの場合や、しっかり炭化層に厚みを与える三角焼きなど焼き方により大きく価格は変動します。また、厚みや仕上げの違いによっても価格が変動するため注意が必要です。

具体的な見積もりや詳細な価格は、施工業者や販売店に直接問い合わせることをおすすめします。業者によっては材料費だけでなく、施工代金も含めたトータルコースの見積もりを提供してくれる場合があるため、事前に確認しておくことが大切です。

予算や用途に応じて最適な焼き杉板を選ぶためにも、複数の業者から見積もりをとるといいでしょう。

焼き杉板の外壁が向いている人

焼き杉板の外壁に向いている人と向いていない人がいます。焼き杉板の外壁が向いている人の特徴について2通りお伝えするため、参考にしてみてください。

外壁の劣化が気になる人

外壁の劣化が気になる方は、焼き杉板の外壁が最適です。焼き杉板は炭化層が形成されているため、耐久性が高く、30〜50年以上の長期間においても劣化の心配がありません。

しかし、耐久性は炭化層の厚みと施工の丁寧さが重要です。炭化層が厚く形成されていない場合、効果を十分に得ることができなくなります。

そのため、焼き杉板の外壁を選ぶ際は、信頼できる業者に依頼して施工の品質を相談・確認することが大切です。正しい方法で施工された焼き杉板の外壁であれば、長年にわたり美しさと耐久性を保ち続けられるため、劣化が気になる人にもおすすめであるといえるでしょう。

デザインにこだわっている人

焼き杉板の外壁は、デザインにこだわりがある方にもおすすめです。焼き杉板は、板ごとに個性的な表情を持ちます。

焼き加減や木目の違いにより、同じ焼き杉板でも持つ表情が異なるためあらゆる風合いが楽しめるでしょう。また、日の当たり方によっても見え方が異なり、時間帯や天候により外壁の印象が変化します。

さらに焼き杉板の外壁は落ち着いた雰囲気を演出し、モダンなデザインから伝統的なデザインまで幅広いデザインに対応可能です。デザインにこだわりがあり、個性的で落ち着いた雰囲気を求める方には焼き杉板の外壁が向いています

焼き杉板の外壁が向いていない人

焼き杉板の外壁はすべての人に適しているわけではなく、なかには向いていない人も存在します。焼き杉板の外壁が向いていない人には2つの特徴があるため、事前に確認しておきましょう。

汚れが気になる人

焼き杉板の外壁は、美しい見た目と耐久性により人気がありますが、炭化しているため汚れがつきやすいです。そのため、とくに炭や汚れに対して抵抗がある方は向いていないかもしれません。

また、焼き杉板は時間とともに自然な風合いが生まれますが、炭化層が雨風にさらされると汚れが目立つ場合があります。少しでも外壁の汚れが気になる方や清潔に保っていたい方は、焼き杉板の外壁は適していません。

汚れや炭に対して抵抗やネガティブなイメージがある場合は、他の材質の外壁を検討すると良いでしょう。

焼き杉板の外壁を無理に勧められている人

焼き杉板は魅力的な外壁であり、人気な外壁であるため、家を建てる際にもおすすめの外壁として紹介されることも珍しくありません。しかし、無理に進められている場合は考え直すことが重要です。

家を建てるとなると、大抵の場合は長く住むこととなります。そのため、少しでも焼き杉板の外壁に対して気になる点がある場合は、無理に採用する必要はありません。

無理におすすめされて外壁に採用してしまうと、後々メンテナンスや見た目の変化に対して不満を感じやすくなります。万が一周囲からすすめられて焼き杉板の外壁を検討している場合は、一度考え直して他の選択肢を確認し、自分自身が本当に満足できる外壁材を選ぶようにしましょう。

焼き杉板を外壁に採用して理想の家に近づけよう

本記事では、焼き杉板のメリット・デメリットについてお伝えしました。焼き杉板の外壁は耐久性が高く、比較的安価に購入できてメンテナンスも必要ないことなどがメリットに挙げられており、人気な外壁であることがわかります。

しかし、汚れやすく使用できる地域に制限があるなどデメリットも存在するため、慎重に選択することが重要です。そのため、まずは焼き杉板の外壁に関する知識を身に付ける必要があるでしょう。

ダイシンビルドでは、10年以上の施工経験があり、焼き杉板の施工を得意としております。メルマガで焼き杉板の情報を発信しているため、ぜひ参考にしてください。

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